多読 tips(4) 楽しい擬音語
多読クラス担当のKumiko先生のtipsシリーズです。
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多読用のやさしい本には、擬音語がたくさん出てきますね。これは、英語の本に限ったことではなく、日本語の絵本や子ども向けの本でも同じだと思います。
うちの長男が1歳の頃、100回は読まされたお気に入りの絵本が、五味太郎の「ぐうぐうぐう」でした。寝てばかりのくじらのお話で、何度も繰り返される「ぐうぐうぐう」といういびきの音がおもしろかったようです。いびきの音は英語だと “zzz. . .” 「ズー」という音になります。ちょっと不思議ですね。
動物の鳴き声も不思議ですよね。犬の鳴き声が “Woof”や“Bow-wow”や“Arf”だったり、ブタが“Oink”だったり、オンドリが“Cock-a-doodle-doo”だったり。どれも違和感を感じるかもしれませんが、ちょっとリアルに言ってみると、実はとてもそれらしいものです。
擬音語というのは、その言語がもっている音の体系の中で工夫して作られています。日本語は、1つ1つの音に必ず母音が入りますから、“Woof”や“Oink”のように、子音だけで終わることができません。その代わり、音の余韻を「ワン」の「ン」の音や「ブー」の「—」で表すなどの工夫をしたのでしょう。
それにしても、犬の声が“Bow”だなんて!・・・ところが、日本でも昔は犬の声を“b”の音で表していたんですよ。狂言「犬山伏」の中では犬は「びょうびょう」という音で鳴いています。この擬音語は、狂言以外にも文語として一般的だったそうです。ただし、どちらかと言うと遠吠えのイメージ。それとは別に、近くのものに吠える声「わんわん」もその頃からありました。それが近世になって「わんわん」が台頭します。どうやら、これには、犬と人間の日常生活の変化が関係しているらしく、野生の遠吠えのイメージの「びょうびょう」から、人間の周りで暮らす動物になって「わんわん」が普通になったようなのです。
擬音語は、音とイメージが凝縮された、豊かな言葉遊びのなのですね。
(Kumiko Uozumi)
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狂言が生まれたのは室町時代だそう。1300年代~1500年代にかけての時代には野生の犬が「びょうびょう」と鳴いていた(吠えていた)・・・人間との生活にって犬のライフスタイルも変わり鳴き声が変化する・・・。ロマンだなあ。(須釜)